知らないと損?新JIS洗濯表示の基本と失敗しない見方・活用方法
服を長く大切にするためには、日頃のお手入れが欠かせません。中でも「洗濯」は最も身近なケアですが、洗濯表示を正しく理解できていないと、大切な服を傷めてしまう原因にもなりかねません。特に2016年に変更された新しいJIS洗濯表示は、以前の表示と比べて国際的な基準に合わせた複雑な記号が増え、戸惑う方も少なくないようです。
この記事では、新しいJIS洗濯表示の基本的な見方から、それぞれの記号が持つ意味、そして表示を日々の洗濯にどのように活かせば良いのかを具体的に解説いたします。表示を正しく読み解くことで、お手入れの失敗を減らし、お気に入りの服をより長く美しく保つための第一歩を踏み出していただければ幸いです。
新JIS洗濯表示とは?なぜ知る必要があるのか
2016年12月1日より、日本の洗濯表示はISO(国際標準化機構)に準拠した新しいJIS表示へと変更されました。これは、世界中で流通する衣類に共通のケア表示を用いることで、消費者が適切なお手入れ方法を容易に理解できるようにするためです。
旧表示に比べて記号の種類が増え、より細かなお手入れ方法が指示されるようになりました。例えば、液温の上限だけでなく、洗濯の強さや乾燥方法に関する記号も詳細に示されています。この新しい表示を理解することは、衣類の素材や加工に適したケアを行い、色落ちや型崩れ、縮みといった洗濯トラブルを防ぐ上で非常に重要です。正しいお手入れは、服の寿命を延ばし、購入した時の美しい状態を長く保つことに繋がります。
基本の5つの記号と付加記号の見方
新しい洗濯表示は、大きく分けて「家庭洗濯」「漂白」「乾燥」「アイロン」「クリーニング」の5つの基本記号で構成されています。それぞれの基本記号には、具体的なお手入れの条件を示す「付加記号」が組み合わされています。
1. 家庭での洗濯
洗濯桶の形をした記号は、ご家庭での洗濯について示しています。
- 液温の表示: 桶の中に記載されている数字は、洗濯液の温度の上限を示しています。例えば、「40」とあれば、40℃を上限として洗濯できるという意味です。
- 洗濯の強さ: 桶の下に線がない場合は通常通り洗濯できます。線が1本ある場合は「弱い洗濯」、2本ある場合は「非常に弱い洗濯」を推奨しており、脱水を含め、よりやさしい処理が求められます。
- 手洗い: 桶の中に手の記号がある場合は、液温40℃を上限とした手洗いが可能です。洗濯機を使用する場合は、手洗いコースなど、非常に弱い水流のコースを選び、洗濯ネットを利用することをおすすめします。
- 洗濯禁止: 桶にバツ印が付いている場合は、ご家庭での洗濯はできません。専門のクリーニング店にご相談ください。
2. 漂白
三角形の記号は、漂白に関する表示です。
- 塩素系・酸素系漂白剤使用可: 何も描かれていない三角形は、すべての種類の漂白剤を使用できることを意味します。
- 酸素系漂白剤使用可(塩素系不可): 三角形の中に斜めの線が2本入っている場合は、酸素系漂白剤のみ使用でき、塩素系漂白剤は使用できません。色柄物の衣類によく見られます。
- 漂白禁止: 三角形にバツ印が付いている場合は、漂白剤の使用は避けてください。
3. 乾燥
乾燥に関する記号は、四角い枠の中に描かれています。大きく分けて「タンブル乾燥(乾燥機)」と「自然乾燥」の2種類があります。
タンブル乾燥(乾燥機)
丸い形が入った四角い記号です。
- 排気温度上限(高): 丸の中に点が2つある場合は、排気温度の上限が80℃までであることを示します。
- 排気温度上限(低): 丸の中に点が1つある場合は、排気温度の上限が60℃までであることを示します。
- タンブル乾燥禁止: 丸にバツ印が付いている場合は、タンブル乾燥機を使用できません。
自然乾燥
乾燥機を使わない自然乾燥に関する記号です。
- つり干し: 縦に線が1本の場合は「つり干し」、2本の場合は「ぬれつり干し」を意味します。
- 平干し: 横に線が1本の場合は「平干し」、2本の場合は「ぬれ平干し」を意味します。セーターなど伸びやすい素材に適用されます。
- 日陰干し: 左上に斜め線がある場合は、直射日光を避けて「日陰で干す」ことを示します。
4. アイロン
アイロンの形をした記号は、アイロンがけに関する表示です。
- 上限温度(高): アイロンの中に点が3つある場合は、200℃を上限としてアイロンがけが可能です。
- 上限温度(中): アイロンの中に点が2つある場合は、150℃を上限としてアイロンがけが可能です。
- 上限温度(低): アイロンの中に点が1つある場合は、110℃を上限としてアイロンがけが可能です。スチームは避けることを推奨しています。
- アイロン禁止: アイロンにバツ印が付いている場合は、アイロンがけはできません。
5. クリーニング
丸い形をした記号は、専門業者によるクリーニングに関する表示です。
- ドライクリーニング: 丸の中に「P」がある場合は、パークロロエチレンおよび石油系溶剤でのドライクリーニングが可能です。「F」がある場合は、石油系溶剤でのドライクリーニングが可能です。
- ウエットクリーニング: 丸の中に「W」がある場合は、専門業者によるウエットクリーニングが可能です。
- クリーニング禁止: 丸にバツ印が付いている場合は、すべてのクリーニングができません。
洗濯表示を実践に活かすためのポイント
洗濯表示を理解したら、次はそれを日々の洗濯にどのように活かすかが重要です。
1. 洗濯表示タグの確認を習慣に
新しい服を購入した時や、初めて洗濯する際は必ず洗濯表示タグを確認する習慣をつけましょう。特にデリケートな素材や特殊な加工がされている衣類は、表示を事前に確認しておくことで、思わぬ失敗を防ぐことができます。
2. 衣類を分類して洗う
表示内容に基づいて、衣類を分類して洗うことをおすすめします。例えば、家庭で洗濯できるものとできないもの、手洗いが必要なもの、色物と白物、デリケートな素材と丈夫な素材などに分けます。これにより、衣類への負担を最小限に抑えることができます。
3. 洗濯ネットの活用
洗濯表示で「弱い洗濯」や「非常に弱い洗濯」が指示されている衣類には、洗濯ネットの活用が有効です。ネットに入れることで、洗濯中の摩擦によるダメージや型崩れ、絡まりを防ぎ、衣類を保護することができます。
4. 洗剤の選び方
洗濯表示に合わせて、適切な洗剤を選ぶことも大切です。「中性洗剤」や「おしゃれ着用洗剤」は、デリケートな素材や色柄物の衣類に適しています。特に手洗い表示の衣類には、これらの洗剤を使うことで、繊維へのダメージを軽減し、風合いを保つことができます。
5. 乾燥方法の注意点
乾燥に関する表示も重要です。タンブル乾燥(乾燥機)が禁止されている衣類を無理に乾燥機にかけると、縮みや型崩れの原因となります。その場合は、つり干しや平干しなど、自然乾燥の方法を選び、日陰干しの指示があれば直射日光を避けましょう。セーターなどのニット製品は、平干しにすることで、型崩れを防ぎやすくなります。
まとめ
新しいJIS洗濯表示は、一見複雑に感じられるかもしれませんが、それぞれの記号の意味を理解することで、お気に入りの服を適切にケアし、長持ちさせるための大切な道しるべとなります。
洗濯表示を正しく読み解き、それに従ったお手入れを実践することは、服の美しさを保ち、愛着を深めることに繋がります。大切な衣類を長く愛用するために、ぜひこの機会に洗濯表示の見方をマスターし、日々の衣類ケアに役立ててみてはいかがでしょうか。